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再生はあり得るか?
~日本の将来の可能性と危険性~

ジェラルド・カーティス氏(コロンビア大学教授)によるライブラリートーク

ライブラリートーク政治・経済・国際
更新日 : 2011年02月08日 (火)

第5章 日本、中国、アメリカにとって重要な4つの外交教訓

ジェラルド・カーティス氏

ジェラルド・カーティス: 中曽根元総理大臣が戦前、戦争中の日本の歴史を自分の目で見て考えた「外交4原則」がありますが、この4つの外交の教訓というのは、今の日本だけでなく、中国やアメリカそのほかの国々についても適用できる教訓だと思います。「力以上のことをしないこと」「ギャンブルをしないこと」「世界の時流をよく理解すること」「外交と内政を混合しないこと」という4つの原則です。

1930年代に日本が軍国主義になって外交でやったことは、大きなギャンブルであって力以上のことをやろうとして大失敗をしたのです。中国を制覇して、真珠湾攻撃をして、アメリカと戦争するという力以上のことをやって失敗しました。最近アメリカはアフガニスタンで力以上のことをやっているし、中国も最近力を上回る外交政策を展開しています。外交を慎重にやらないといけないという中曽根さんの原則は需要です。

明治時代に「時流に乗る」という表現がよく使われました。世界の態勢をよく理解して対応する戦略を練るのが対応型外交にとって一番大事なことですが、今のように冷戦時代の構造が崩壊してそれに代わる新しい世界政治経済構造ができていない時は、世界の動向をつかむのは簡単なことではありません。

「外交を内政の道具にするな」と中曽根さんは言いますが、これも大事なことです。中国が尖閣列島で漁船の船長が逮捕されたことに対してあんなに過剰な反応を示したのは、中国政府は国内のナショナリズムを恐れて、国内の批判を抑えるために外交と内政を混合したように思います。

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