記事・レポート

時代を読み、世界を俯瞰して、フロンティアを拓く場へ

シナリオはない。人と場が相互に働きかけ、共に進化する。
ー平河町ライブラリー 開館記念座談会よりー

更新日 : 2011年01月06日 (木)

第2章 問題提起:フラット化とスパイキィが併存する世界

竹中平蔵氏

竹中平蔵: 袖川さんは、社会トレンドという方向から「私たちがどんな時代に生きているか」を捉えて問題を提起してくださいました。袖川さんの社会ウォッチはとても面白いし、その通りだと思いますが、私はあえて違う角度から問題提起してみたいと思います。

この20年間、グローバル化とデジタル革命が同時進行してきました。これがものすごく大きな変化をもたらしています。グローバル化は情報革命によるフロンティアの拡大であり、デジタル革命は技術によるフロンティアの拡大です。

では、それによってどんなことが起こったか。

ブラジル銀行東京支店のオペレーターはいま、ブラジルにいます。なぜなら、グローバル化とデジタル革命が起こると、隣に電話をかけるコストもブラジルに電話をかけるコストも同じになっていくからです。徹底的にフラット化していくわけです。その結果、日本のオペレーターの給料はブラジルやインドの給料に収斂していく。これがいま、私たちが直面しているグローバル化の厳しさです。

また、フラット化が進む一方で格差も広がります。フロンティアが広がれば、そのなかで勝ち上がっていく人と取り残されていく人が出てくるからです。

つまり、フラット化の対極には、こうしたスパイキィ(spiky:尖った、でこぼこした)な面もある。私たちはこの両方が同時進行する世界にいます。

袖川さんが話されたトレンドは、どちらかといえば、フラット化の中にいる人たちの現象を巧く捉えています。フラット化の恐怖のなかにとどまって、いかにそのなかで居心地よくするか、そのためのつながりを求めるか、というような。しかし、平河町ライブラリーに集まる人は、むしろスパイキィな世界に挑もうとしている人たちではないでしょうか。

若い世代から反論が出そうですが、私はやはりスパイキィな世界に挑む人生がいいと思うし、日本にとっても必要だと思う。そういう人たちが平河町ライブラリーに集まってほしいと思います。

マーケットに依らず、社会のバリューを高める活動は素晴らしいけれど、こうしたトレンドが続いた先に、経済的貧しさと真剣に向き合わなければならないことになるんじゃないか。私は経済学者としてそれを心配しています。

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