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iPad登場後の出版社のデジタル戦略とは?

電子雑誌にいち早く対応した、コンデナスト社の真意と今後の展望

BIZセミナーオンラインビジネス
更新日 : 2010年11月26日 (金)

第8章 同じ電子書籍でも、マーケットやメカニズムは多種多様

田端信太郎氏

神原弥奈子: ツイッターからも質問がきています。「雑誌は広告が収入源ということから逃れられないのでしょうか?」

田端信太郎: 雑誌をどう定義するかですよね。『週刊金曜日』が雑誌なら、これには広告はほとんど入っていないので、別に逃れられないことはないと思います。雑誌は結局形態でしかなくて、読者の読む動機が何なのかということだと思うんです。

例えば、株に興味があって投資する銘柄を探しているから経済誌を読みたいという人もいます。でもファッション誌やライフスタイル誌は、何となく面白いもの、おしゃれなものなど漠然とある欲求に関して、セレンディピティな形での出会いの場を提供することが本質的な意味だと思っています。

だとすれば、広告が入っていることは決してネガティブなことではないんです。雑誌にもいろいろな形があるので、それを一つに括ることに無理があるんじゃないでしょうか。

ここで、電子書籍の分類を4つに整理してみましょう。縦軸をフロー←→ストックとして、「古くなったら意味がない」「古くなっても意味がある」というコンテンツで分けます。横軸を断片←→連続として、「一部分だけを取り出して読んでも意味がある」「ある程度続けて読まないと意味がない」という傾向で分けてみます。

一般的に
【フロー・断片】エリアには「通信社の時事記事」
【フロー・連続】には「マンガ誌、週刊誌」
【ストック・断片】には「辞書」
【ストック・連続】には「特集主義の月刊誌」
があります。それぞれ支配しているメカニズムが全く違います。

マンガ誌は紙の時代から表4ぐらいしか広告が入らなかったという意味で、全然違う媒体だと思います。ユーザー課金で一番うまくいっているのも自然なことだと思います。辞書にはいろいろなiPhoneアプリがあります。辞書を全部読む人なんかいないので、月300円とか500円の購読モデルが合っていると思います。

このように電子書籍や電子出版といっても、全然違うマーケットの力学やメディアとしての成り立ちのものがごちゃ混ぜになっているので、あまり何もかもを一緒にして考えないほうがいいと思います。
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該当講座

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~

iPadにいち早く対応したコンデナストの真意と今後の展望

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~
田端信太郎 (LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

田端 信太郎(コンデネット・ジェーピー カントリーマネージャー)
iPadやAmazonのキンドルなど、デジタル化の波に出版業界を取り巻く環境が大きく変化しています。米国でのiPad発表と同時に、iPad対応の雑誌「wired」を発表し、一早く電子雑誌の世界に名乗り上げたコンデナスト社。今回は、そのコンデナスト社のデジタル戦略やiPadへの取組み、日米の出版業界のビジネスモデルの違いなど田端氏にお話頂きます。


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