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iPad登場後の出版社のデジタル戦略とは?

電子雑誌にいち早く対応した、コンデナスト社の真意と今後の展望

BIZセミナーオンラインビジネス
更新日 : 2010年11月16日 (火)

第1章 ブログもウェブサイトもツイッターも、みんなPublish

『GQ』や『VOGUE』でいち早く電子雑誌の世界に参入したコンデナスト社。同社の日本におけるデジタル戦略を統括する田端信太郎氏がメディアビジネスの現状と展望について語ります。マーケティング・リサーチなんてウジウジやるな、記事のバラ売りは是か非か、オウンドメディア万歳のリスクなど、気になる話題が満載です。

ゲスト講師: 田端信太郎 (コンデネット・ジェーピー カントリーマネージャー)
モデレーター: 神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

神原弥奈子氏(左)田端信太郎氏(右)

神原弥奈子: 本日は『GQ』や『VOGUE』などで有名な米国のコンデナスト社から田端さんをお招きしました。田端さんはもともとリクルートで『R25』を立ち上げ、その後にライブドアに移ってメディア事業を推進された方です。よろしくお願いいたします。

田端信太郎: 私はコンデナスト社に(2010年)5月初頭に入ったばかりなので、まだまだ会社としてのコンデナストの考えと、私が話すことが完全に一致しているとはいえません。ですから、今日の話は「個人的見解」と前置きさせていただきます。

電子書籍の時代になると「書店さんが困る」といわれます。でも、良いとか悪いとかではなく、もう歴史的必然なので、私はそういう議論には興味がありません。昔のしがらみや利害を守っていても意味がない。テクノロジーは非常に残酷です。テクノロジーを無視して精神論や文化論をべき論で語っても無意味だと思います。

「電子書籍がもたらすものは何か」と問われたら、私は「印刷メディアのルネサンス」だと答えます。そもそもPublishは「Public(公)にする」ということで、Publish=出版、プリントではありません。ブログだろうがポッドキャスティングだろうが、ウェブサイトだろうが、ツイッターやフェイスブックだろうが、基本的にはみんなPublishです。

本来、情報は自由になって飛び回りたいんです。いろいろな情報伝達の手段を考えると、物理的な紙に印刷することは1つの形態でしかないし、悪い言い方かもしれませんが、自由に飛びたがっている鳥をカゴに入れて売っているようなものです。

電子雑誌のメリットは、まず、取次や書店を通さなくてよく、在庫もなくていいこと。もう1つは、いろいろな意味で時間軸が自由に使えることです。今、本屋に並んでいる月刊誌の企画が考えられたのは、多分2~3カ月前です。ウェブサイトや他のメディアと競争するうえで、このタイムラグはとんでもないハンディキャップです。これが電子雑誌になると進行スケジュールは大幅に短縮できますし、内容も配信ぎりぎりまで直せます。3カ月近いタイムラグが解消されるわけです。

表示するものも簡単に変えられます。例えば天気や気温データなどはネット越しにAPIで簡単に届けられるので、天気によってファッション誌の表紙を変えたり、服のコーディネートを変更することができます。ビジネス誌なら、その日の株価に基づいて台割を変えられます。
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該当講座

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~

iPadにいち早く対応したコンデナストの真意と今後の展望

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~
田端信太郎 (LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

田端 信太郎(コンデネット・ジェーピー カントリーマネージャー)
iPadやAmazonのキンドルなど、デジタル化の波に出版業界を取り巻く環境が大きく変化しています。米国でのiPad発表と同時に、iPad対応の雑誌「wired」を発表し、一早く電子雑誌の世界に名乗り上げたコンデナスト社。今回は、そのコンデナスト社のデジタル戦略やiPadへの取組み、日米の出版業界のビジネスモデルの違いなど田端氏にお話頂きます。


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