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更新日 : 2010年05月21日 (金)

第2章 技術大国日本の問題は、海外に出て行かないこと

黒川清氏

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黒川清: 10年ぐらい前までは、国際的枠組みは「インターナショナル」と言っていたのですが、最近は「グローバル」と言うようになりました。なぜでしょう。

リーマン・ショックの一件でもわかるように、ファイナンスは国境がなくなってしまいました。企業にも、サイエンス、科学技術にも、国境がなくなってきました。多くの人が世界を意識し始め、国境を越えた共通の問題、例えばNGOがたくさん登場しています。さらに社会起業家たちが出てきて、これらも国境なく連携しています。

日本はまだ世界2番目の経済大国です(2009年現在)。私は先日、APECに行ってきました。シンガポール政府が招いてくれたもので、日本の政府が私に要請したわけではありません。こういうとき、公式の行事を除いては、私以外、日本人があまりいないことが多いので、日本のプレゼンスのために人に会い、発言し、ディベートをしてくるのです。

APECでは、鳩山総理が2日目の最後にスピーチをしましたが、日本のビジネスマンがどのぐらいいたかというと、私が会ったのはたった4人です。中国の企業人をはじめとして全部で400~500人いたと思います。そういう場に日本人がなぜ出ていかないのか、私にはちょっと理解できません。ビジネスの機会を作る絶好の機会だと思います。

2010年は日本がAPECのホストです。だから、「アジェンダ設定をして旗を揚げよう」と経産省などと話しています。日本には環境技術や材料化学、クリーンエネルギーなど、いろいろな強みがあります。でも、世界の成長している場所に、日本人は出ていません。だからビジネスとして広がらないのです。

この1カ月前には、インドでクリーンエネルギーのポテンシャルについて話しました。ここには日本の企業人が結構いましたが、プレゼンに迫力がありませんでした。聴衆の心を射止めていないのです。

インドは10億の人がいて、これから数%ずつ、10年間ずっと成長します。しかし日本のビジネス関係者はインド全体で何人いると思いますか? たった3,300人です。売る物があるのなら、社内だけで言っていたってしょうがないのに海外に出ていっていない。

技術力が素晴らしい日本に期待している人は海外にたくさんいます。その需要にどうやってこたえるかが問題です。これがビジネスです。海外の滞在経験がある日本人は多いけれど、多くは会社での出張でしょう。個人という資格で世界で活躍している人はなかなかいません。どのような相手とどういうパートナーを組めばいいかを知るには、自分の価値は何か、相手から期待されていることを感覚的にわかっていなければなりません。

アメリカ、インドなど多くの企業人たちがグローバルにつながりながら、アジアの成長地点に拠点を移してきている状況で、そこに日本が出遅れているというのは、日本からの多くの素晴らしい技術があるので、すごい損失だと思います。

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