記事・レポート

新書本—軽装な冊子が森羅万象を映す

ブームの理由から“おすすめの新書本”をすすめる新書本まで

更新日 : 2010年04月05日 (月)

第6章 森羅万象を掌握する図書目録

六本木ライブラリー カフェブレイクブックトーク 紹介書籍

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【在庫新書本の解説目録で毎年刊行され、書店で無料配布】

澁川雅俊: 1章の「はじめに」で挙げた読書世論調査で新書本を読む理由を尋ねたところ、「本屋の店頭で目立つから」がもっとも多い回答でした。おそらく、それは〈平置き〉されている新刊の新書本のことを指しているのでしょう。つまり一般に読者は書店で目立つものを手にして、品定めし、そして気に入ったらそれを買って読むことになります。

それに対して書棚に並べられている新書本ほど目立たないものはありません。したがってそのように並べられた新書本の中から何かめぼしいものはないか詮索するような人はまずいません。しかしそのように並べられている既刊の新書本の中に重要なものがあるかもしれないのです。そんなときに役に立つのが、新書本の解説目録です。本日は皆様に全部で10点の新書シリーズの解説目録をお配りしておりますが、実は本日のブックトークの本命は解説目録なのです。

この類のものを一度は手に取られた方もおいででしょうが、これらはいずれも毎年刊行(「2009年版」は、2008年までに出版されたもので、解説目録刊行時点で出版社在庫のものを収録)され、書店で無料で読者に配布されています。これら以外の新書シリーズについては出版社のホームページからアクセスできる電子版目録がありますが、これらの小冊子の印刷物は持ち運びにも簡便で、いつでもどこでも開いてみることができるという利点があります。

単に「目録」としているものもありますが、いずれもそれぞれのシリーズの新書本の内容を概説しており、各シリーズに収められている本の内容を概観できます。この概観できるというのが目録の肝心なところです。

【目録で、書物の世界を見渡す】

このブックトークで前にも紹介したことのある『読んでいない本について堂々と語る方法』(P・バイヤール著、大浦康介訳、08年筑摩書房)は、書名が奇抜なので評判になりましたし、一時期ある書店のベストセラーにもランキングされたこともありました。

この本の中で著者は、「読んでいない本について堂々と語る」人物の典型として、司書のことを挙げています。バイヤールはその理由をオーストリアの小説家ムージルの『特性のない男2』(浜川祥枝訳、1964年新潮社刊)の一節を引用して説明していますが、司書の仕事の本質を実によく捉えています。

つまりそれは、図書館に収められているすべてを一つひとつ読んでいなくとも蔵書全体を見渡し、その中から特定の本を簡単に探し出すことができる。そういうことを可能にするために、司書は図書目録を発明し、それを駆使する技能を身につけているのです。

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