記事・レポート

サマーダボス会議 in 大連 報告会

~弱体化した日本の発信力。回復への提言

更新日 : 2009年11月04日 (水)

第2章 ダボス会議とサマーダボスの基礎知識

土屋聡: 具体的な議論の前に、「そもそもダボス会議とは?」ということを説明したいと思います。みなさん、マスメディアなどでダボス会議というのを聞いたり見たりしたことがあると思うのですが、具体的な活動はあまり知られていないのではないかと思います。

ダボス会議はワールド・エコノミック・フォーラムの年次総会として、毎年1月末にスイスのスキーリゾート地、ダボスの国際会議場で開催されている会議のことです。

ワールド・エコノミック・フォーラムというのは、民間の非営利の国際機関で、ジュネーブに本部があり、ニューヨーク、北京、そして今回六本木ヒルズに新設された東京に拠点があります。

1月の集まりでは、約2,500人がダボスで一堂に会します。普通のセミナーのように思われている方もいるようですが、誰でも参加できるわけではありません。2,500人の約半数は各国の多国籍企業、大企業のCEOや経営者で、その人たちがメンバーになって組織を運営しています。地域や産業のバランスを考え、満遍なく世界中の主要企業の代表者が集まるように構成されています。

あとの半分は、政府の代表者で、G8やG20の首脳や財務大臣、外務大臣、経済産業大臣などで、国会議員や一般の大臣は参加できません。それから国連事務総長や世界銀行、IMF、各国メディア、学識経験者の方々、さらに、世界で大きなインパクトを持っているNGOの代表者や労働組合の代表者も集まっています。また、イスラム諸国、キリスト教、英国国教会、ユダヤ教、仏教など、宗教のリーダーもいます。

会議の議論はウェブサイトで公開されていますので、議論をフォローすることはどなたでもできますが、参加できる2,500人は、現在の日本および世界のリーダーの方々です。極限られたエスタブリッシュなリーダーが集まる場所を維持して、2,500人で議論をするというところにバリューを作り出しているのが、ダボス会議です。

しかし世界の潮流では、多国籍企業の代表者は毎年新しい人に代わっています。国家の代表も、日本のように毎年新しい人に代わっているような状況です。さらに、これからの世界のグローバル・アジェンダを決めていくリーダーシップがどこにシフトしているかというと、西から東、中国そして日本を含めたアジアにシフトしているという現状があります。

そういう中で、「ダボスで開催しているだけでいいのか」ということが、フォーラムで議論されたのです。「新たなシフトを起こしている人たち、新しくチャンピオンになっていく人たちを集める会議を別にやってみてはどうか」という話になりました。

その会合を開催する場所は、やはり次のパワーの拠点になっていく場所だということで、出てきたのが中国でした。こういう形で力のシフトをアジアに向け、新しくアジアで開催することになったのがサマーダボスです。

サマーダボスに集まる人たちは、ニュー・サイエンティストやヤング・グローバル・リーダーと呼ばれる、さまざまな場所でリーダーシップを発揮している若手の経営者、ないしは若手の首長など各国のリーダーです。それから、私たちがグローバル・グロース・カンパニーと呼んでいる、急成長を遂げている企業の代表者。加えて、その地域や場でこれから新しくアジェンダを形作り、新しいリーダーシップを率いていくであろうと思われる人たちです。

サマーダボスは英語で「Annual Meeting of the New Champions:ニュー・チャンピオンの年次総会」と呼ばれています。今年2009年は、9月10日~12日まで、中国の大連で開催され、今ご紹介したような方々が約1,300人集まって議論しました。

3年目の今回は、日本からの派遣団が最も多く、80人の日本人が参加し、日本の存在感がある会合になりました。

関連書籍

戦略シフト

石倉洋子
東洋経済新報社

関連リンク


該当講座

サマーダボス会議 in 大連 報告会
石倉洋子 (一橋大学名誉教授)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

石倉 洋子(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授)
竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授)
ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが東京に事務所を開設することを機に、ダボス会議の前線で議論されていることは何なのか、日本はどのように世界の課題に貢献できるのかについて考えるセミナーです。今回は、9月10日~12日に中国・大連で開催されるニュー・チャンピオン年次総会(サマー・ダボス会議)で何が議論されたか、石倉氏と竹中氏が解説します。


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