記事・レポート

加藤良三氏の「アメリカと野球雑感」

~野球と国際政治を10倍楽しむ方法~

更新日 : 2009年10月13日 (火)

第2章 日本野球は問題山積。しかし、大リーグより優れた点もある

加藤良三氏

加藤良三: 今回(2009年)、WBCで日本は優勝しましたが、次回の2013年に向けては、たくさんの課題があります。監督選びをどうするか、情報収集の態勢をどうつくるか、使用球はこのままでいいのかなど、いろいろあります。

日本のプロ野球はドーピングの規制と闇組織の排除では、世界の野球界でも日本のプロスポーツの中でも一番実績をあげていると自負しています。しかし選手が薬を使うのをどんなに防いでも、使用球が違っていると日本選手の成績に対する国際的な評価に影響してしまいます。

私がこういう意見をコミッショナーとして述べると、一部球団関係者から「それは業者との関係とか、いろいろ難しい問題がある」という非常に強い反対が起こります。それを私がどこまで押さえられるかわかりませんが、2度も世界一になった日本の野球が、「球が滑る」だの「マウンドが硬い」だの、「イニング交替前のピッチャーのウォーム・アップが認められない」だの、毎回毎回、重要な国際試合のたびに国際標準との調整に戸惑うというのは、ある意味では愚なことであり、みっともないことでもあると思います。こうしたことの積み重ねがシーズン中の選手の故障を招くことだってあるでしょう。

そんなことがある一方で、アメリカ野球と日本野球について、野茂英雄さんが面白いことをおっしゃっていました。「日本の野球は個人的なパワーとか、個々の選手のパフォーマンスの力では大リーグにおよばない。ただ、そのことは日本の野球がアメリカ大リーグの直下にあるマイナーリーグだということを意味しない。横に出た別の空間で、日本の方が優れたところもある。それはチームプレーもそう、サインプレーもそう、基礎的な練習の積み上げ方もそう。日本の方が優れたところがある」。

現にWBCのあと、アメリカの超一流選手、デレック・ジーターやジミー・ロリンズが、「日本の野球の基礎に忠実なところを、自分たちは学ばなければいけない」ということを虚心に述べています。

しかし、2013年を迎えるころには、今のサムライジャパンの緻密なチームプレーや、その結果勝ったということに飽き足らない日本の野球ファンも出てくると思います。「日本も和製大砲がほしい。王さんのあとは出てこないのか」、「田淵さんのあとは出てこないのか」こういう課題にも直面すると思います。

1つのパターンで、いつまでもずっと同じようにやっていくことには限界があるでしょうから、私としてはその辺も考えなければいけないと思っています。


該当講座

アメリカと野球雑感
加藤良三 (日本プロフェッショナル野球組織 コミッショナー)

加藤良三(日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー)
3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表チーム優勝に至るまでの経緯を間近で見てきた加藤氏にご登壇いただく六本木ヒルズクラブランチョンセミナー。WBC日本優勝の舞台裏についてお話します。


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