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今、日本が大切にすべき“プリンシプル”を考える

~『白洲次郎 占領を背負った男』著者北康利、竹中平蔵が白洲次郎を語る~

更新日 : 2009年10月15日 (木)

第3章 自分の頭で考えるために「イーグル・アイ」を持て

アカデミーヒルズ 六本木スクール 会場の様子 北康利氏

北康利: 白洲次郎は周囲の若い人たちに「自分の頭で考えろ」と言い続けました。今まさに、自分の頭で考えることが役に立つときです。私はよく「イーグル・アイ」と表現するのですが、少し引いて見ることが自分の頭で考えることになります。今起こっていることに首を突っ込むのではなく、冷静にちょっと引いて見るのです。

例えばマスコミを引いて見ると、「テレビは視聴率上げてなんぼだな」「週刊誌は売れてなんぼだな」と分かってくる。そうすると、真実だろうが嘘だろうが、盛り上げれば売れるわけだな、という事実に気づくわけです。

日本の新聞は、今どんどん売上部数が落ちています。そんな中、国際面は誰も読まないので、どんどん国際面を小さくしています。仕方がないので私は朝起きて、インターネットでBBCやウォールストリートジャーナルなどを読み、台湾や韓国の新聞サイトをチェックしています。

大陸との関係が微妙な台湾では、新聞はアンテナの高い情報を供給しています。そういうものが日本の新聞にはあまりありません。昨年(2008年)6月、尖閣諸島の近所で日本の巡視艦と接触した台湾の漁船が転覆したとき、台湾の新聞が「日本と開戦だ」という論調で一色だったとき、日本では「山本モナがキスしていた」という話題で盛り上がっていました。

こういう昼寝をしているような国にいたら、自分の頭で考えようにも材料がないわけです。まず自分で考える前提として、客観的な情報をたくさん集めること。自分の関係しているところからちょっと離れた情報も一緒に集め、その上で考え、先を読み、対応していくことです。

情報を集めるのは何かと言うと、人間力です。白洲は徹底的に人脈をつくっていました。私には80歳代の友人もたくさんいるのですが、自分より偉い人にいかに近づくかという努力をすることが重要だと思っています。

テレビをボーッと見ていたら2、3時間あっという間に過ぎてしまいます。昔の人はその間に人と会って話をし、勉強していたのです。今も昔も1日は24時間、条件は同じですが、昔に比べて人間力を磨く時間が少ないことを前提にして人間力をつけていかないと、とても昔の人の人間力までは到達できません。

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北 康利
講談社

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今、日本が大切にすべき“プリンシプル”を考える
北康利 (作家)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

戦後の激動の時代に、日本に誇りを持ち、日本のために自分の役割を誠実に全うした白洲次郎の「生き方」から、我々は多いに学ぶことができるのではないでしょうか。
今回は北康利氏と竹中平蔵アカデミーヒルズ理事長が「今の日本人に求められる“プリンシプル”とは何か」を、白洲次郎の生き方から議論します。


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