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今、日本が大切にすべき“プリンシプル”を考える

~『白洲次郎 占領を背負った男』著者北康利、竹中平蔵が白洲次郎を語る~

更新日 : 2009年09月16日 (水)

第1章 若者に元気を与えたい。だから本を書く

「従順ならざる唯一の日本人」と呼ばれた白洲次郎。戦後という激動の時代に日本に誇りを持ち、私益ではなく国益を考え行動した氏のプリンシプルとは何だったのか。そして今、グローバル化が進み世界規模で大きな変化が起きつつある中、日本人に求められるプリンシプルとは?白洲次郎の生き様から探ります。

ゲスト:北康利(作家)
モデレーター:竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長)

北康利氏

北康利: 私が『白洲次郎 占領を背負った男』(講談社/2005年刊)を書いたのも、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』(同/2007年刊)、あるいは今回『吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』(同/2009年刊)を書いたのも、最近日本に元気がなく、特に若い人たちに元気を与えたいという思いが自分の中にあったからです。

最近、「構造改革で格差が広がり、社会として非常に問題である」と言われています。変な言い方かもしれませんが、「実際に競争が激しくなって貧富の差が大きくなっているのなら、まだ救いがある」と思っていたのです。

しかし最近ちょっと気になることがあります。内田樹さんの『下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち』(講談社/2007年刊)によれば、最近の若者は貧しくてもいいと下流を志向している。要するに若者に向上心がなくなっているということです。

構造改革は「頑張ればどんな高みにでもいける」という可能性を示しているわけで、格差が広がっているのは、ひょっとしたら「自分は別に下流でいい」という人が増えているからではないかと心配になりました。そういう人たちにもう1回元気を出してもらうために、私は本を書き続けています。

2006年4月にNHKの『その時歴史が動いた』に出演して白洲次郎を紹介して以来、白洲が脚光を浴びるようになりました。「2ちゃんねる」がその実況スレを立てていましたが、「こんな格好いい人がいたのか」という言葉で埋め尽くされていました。「2ちゃんねる」に集う若者をして、「格好いい!」と憧れを抱くだけの力が白洲にはあったのです。

私が若い頃、元気をもらった本が2冊あります。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』。そして、城山三郎の『官僚たちの夏』です。私は若者に元気を与えられる本を書くことをライフワークにしたいと思っています。

戦前は伝記物の本がたくさんありましたが、今は欧米の図書館と比べても、日本の伝記コーナーは圧倒的に冊数が少ないと言われています。そういう中で、優れた人を褒めること、褒めて尊敬して学ぶ素晴らしさを、評伝を書くことで若い人たちに教えていきたいと思っています。

関連書籍

白洲次郎 占領を背負った男

北 康利
講談社

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今、日本が大切にすべき“プリンシプル”を考える
北康利 (作家)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

戦後の激動の時代に、日本に誇りを持ち、日本のために自分の役割を誠実に全うした白洲次郎の「生き方」から、我々は多いに学ぶことができるのではないでしょうか。
今回は北康利氏と竹中平蔵アカデミーヒルズ理事長が「今の日本人に求められる“プリンシプル”とは何か」を、白洲次郎の生き方から議論します。


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