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【ライブラリーイベント】開催レポート
人の生を哲学する—自己の自覚と哲学的思考の錬成に向けて—

ライブラリーイベント

日時:2017年1月31日(火)19:00~21:00@スカイスタジオ

ライブラリーイベントでは、比較的珍しいテーマ「哲学」のワークショップを開催し、生きていることとは?という日常ではあまり考えることのない「人の生」をテーマに哲学対話を行いました。

「生きている」とはいかなることか?



スピーカーは、日本学術振興会特別研究員の吉田幸司さん。
昭和初期の京都学派の哲学者、三木清(1897-1945)の「人間の条件について」を参照しつつ、三木がその中で言う「虚無は人間の条件である」ということに焦点をあて、人の生について参加者全員で考えていきました。

参加者には、「人間の条件について」を事前に読んだ上で参加いただくよう課題が出されました。課題の文章を読み、わからないところを事前に把握しておくと議論に参加しやすいとのことでした。難しい印象の哲学のイベントということに加え、課題の文章がとても難しい文章だったので、申し込みされた方が敬遠されるのではないかと少し不安になりましたが、実際には、出席率も良く、非常に活発な良いワークショップとなりました。

三木清「人間の条件について」

哲学の定義とは?


まずは、吉田さんより「哲学とは?」という簡単なプレゼンテーションがあり、「哲学ってどういうイメージですか?」と会場に問いかけると、「日常で何の役に立っているのかわからない」「答えがない」「完璧にノーアイデア」「難しそう」などというような答えが返ってきました。それほど、哲学というのは、私たちの生活に根付いていないということがわかりますが、実は、哲学の専門家に聞いてもこたえに困ってしまうほど、明確な学問規定がないのだそうです。さらには、学問であるのかということも怪しく、哲学は何か?ということ自体が哲学になっていると言います。

それでは、哲学には共通理解がないのか?というとそうでもなく、例えば「松下幸之助の哲学」とか「イチローの勝利の哲学」など哲学という言葉を格言や信念というような意味に使う場合もありますが、アカデミズムの中の哲学はもう少し違い、人間や世界など何らかの事柄について、ある原説とかテーゼがあったときになぜそう言えるのか?これはどんな意味なのか?と考えてみたり、本当は違うんじゃないか?など疑ってみたりということだそうです。

手段としては、当たり前に受け入れている前提を疑ってみるということがあります。例えばこの日のテーマのように、「生きているとうこと」を改めて考えることは普通しませんが、そこをあえて疑ってみるということが哲学になります。ほかにも、既存の現説を反対に考えてみたり、他者と対話してみたりなどの手法があります。

哲学のことを英語でフィロソフィーと言いますが、語源はギリシャ語のフィロソフィアで、愛するという意味のフィレインと知恵を意味するソフィアから成り立っていて、知恵を愛好することがもともとの意味であり、知の営みとしていろいろなことを考えてみるというのが哲学の根本だということです。

いざ哲学対話!


後半は、課題の三木清の「人間の条件について」の簡単な解説があり、その後、ワークショップへと移りました。

約20名ずつの二つのグループに分かれ、それぞれにファシリテーターが入って議論を進めていきました。
まずは隣の人と課題文「人間の条件について」のわからなかったこと、感じたことなどを5分程度話しあい、今度は反対の隣の人と同様に5分程度話した後、どんな感想などがあったかとグループで共有しました。「読めば読むほど
分からなくなった」「虚無は人間の条件だと書いているが、理由もわからず、否定も肯定もできない」「科学と言うより、文学とかポエムとかエッセイのような感じ」「断定的に言われても全く理解できず、拒否反応しかない」「何が言いたいのか?」「ナンセンスで必死で読めばわかるというレベルのものではない」「日本語ではないようだ」「夢を語っているのか?」などなど、とにかく全く理解に苦しむというような意見がほとんどでした。

次に、グループでの議論で共感する部分、実体験として似たような思いがあるかなどについて問いかけると、少しずつではありますが、「子供の頃に自分は何者だろう?」[お母さんはいったい誰?」と思ったことがあるとか、部分的ではあるけれども、共感できるというような意見もだされました。

その後、吉田さんより、この文章を読み解く糸口をみつけられるように吉田さんなりの読み解き方の解説がありました。それに対して会場から、その読み解き方は違うのではないか?というような意見もだされましたが、まさに、こういうような対話が哲学的な営みであり、哲学の研究者たちは、日々このような思考と対話を繰り返しているのだそうです。

哲学対話を終えての感想


哲学対話を終えて、「最初よりもっとわからなくなった」「もやもやしてしまった」「少しだけ哲学がどんなことか理解できた」など、感じることは色々だと思いますが、このワークショップをきっかけに、哲学とはどんなものか?とか、今日のテーマである人の生についてなど、思考を深めるきっかけになってもらえればうれしいという言葉をいただき、閉会となりました。

確かに聞けば聞くほど、頭の中が熱くなってもやもやしてくるような難しいワークショップでしたが、結果や結論をだすことが目的ではなく、思考をめぐらすことが哲学なのだろうと思いました。


【スピーカー】吉田 幸司(日本学術振興会特別研究員PD) 


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