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ライブラリアンの書評    2018年10月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?


2018年10月6日、築地市場は83年の歴史を終えました。
そして10月11日に豊洲市場が開場し、新たな市場としての営みを始めています。



個人的な興味もあり、営業最終日に築地場内市場に足を運びました。

場内市場特有の賑わい、ピリピリする肌感覚。場内の人たちは黙々と日々の仕事をしているように見えながら、「あっちでもまたお願いします」と声をかけあい、「豊洲に行ってみなけりゃわからない」「やるしかない」そんな雰囲気が漂っていました。

実際にその場にいると、本当に築地は終わってしまうのだろうか?という、夢見心地がしたものです(場外市場は今まで通り、営業は続けられます)。

 
 
 

築地市場とは、どのような場所だったのか。
 

貴重な写真資料とともに、人・歴史・建築を軸にして「築地」を明らかにする本書。築地市場の文化団体「築地魚市場銀鱗会」の事務局長を努める著者だからこそ、著わすことができた年代記。

貴重な写真資料は、築地市場を取り巻く人たちの姿をあらわにします。人々の息づかいが歴史とともに積み重なり、築地が築地になっていった軌跡に、思わず嘆息してしまいます。
本書にあふれる築地への想い、そして市場の熱気が、そのまま本から伝わってくるようです。


1923年の関東大震災を機に、日本橋から築地に移転をした市場。移転後の築地にも、様々な問題がありました。それを長い時間をかけて最適化されていったのが今まで続いた築地の姿。

豊洲ももちろん課題は山積みですが、市場の人たちの活気と負けん気が、豊洲を世界の市場へと切り拓いていってくれるに違いありません。
 


 

大きな音を立てながら、今まさに変わりゆく東京の胎動を知るためにも「読む」というより「肌で感じたい」一冊です。 
 

 (ライブラリアン:結縄 久俊)

 

築地市場クロニクル【完全版】1603-2018

福地享子【著】 築地魚市場銀鱗会【編集】
朝日新聞出版

 

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