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ライブラリアンの書評    2018年3月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?


2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、変わりゆく東京。時代が動く真っただ中、ふたつの歴史的な場所、築地市場・明治神宮を「東京の聖地」としてフォーカスした本書。「聖地」とはどのような場所なのでしょう?



1923年の関東大震災を引き金に現在の場所に移転し、1935年に開場した築地市場。
当時の建築技師たちにより作られた扇形の建造物が、市場に運ばれてくる魚介類を合理的に捌く機能を生み出しました。

まず扇の外側に運ばれてきた魚介類が、卸売りの人たちによって分類されます。それを仲卸の人たちが引き受けさらに細かく分類し、料理人やお得意といった買出しの人たちに販売します。「卸売り→仲卸→買出し」という物流が行き交う様は「一見するとカオス」なのですが、「よく見るとそこには整然とした秩序が生み出されている」という「制御された混沌」があります。建築の構造と人間の活動が完璧にかみ合っているのです。



そして明治天皇の崩御に伴い、天皇を祀るために作られた明治神宮。
建築物というよりも、むしろ「森」そのものが神社であり、古来の墓所である「古墳」をモデルにした内苑・外苑の構造をしています。

その根本にあるのは、人間と自然を差別化するのではなく、自然が人間に及ぼす拘束を受け入れながら、両者の中間に人間の生きる道を求める、という思想です。それは自然を支配するという西欧的なものではなく、自然が自身の力量を発揮できる環境を整える、という日本人的な心性の実現を目指しました。



いずれも近代化と伝統の矛盾を乗り越えて新たな伝統を創出しようとする思いで造られ、自然・人間・建築機能、これらすべての奇跡的な調和がもたらされた「聖地」となりました。

その場所が今まさに、時代の流れによって変わろうとしています。築地市場は今年秋に豊洲に移転し、神宮外苑においては新国立競技場が建造中です。

聖地に宿る歴史と心性を知り、その場に訪れ場の空気を吸うこと。変わろうとしている時代の胎動を身をもって体感することは、今しかできないことであるに違いありません。


青山墓地に、この時期のみの桜並木。その向こう、左上が明治神宮。右側の神宮外苑では新国立競技場が造られています(クリックすると拡大します)


(ライブラリアン:結縄 久俊)


アースダイバー東京の聖地

中沢新一
講談社


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